こしぶきの家
時の流れをデザインする。
漆喰と焼板の壁を横目に見ながら疎水をまたぐ小さな石造りの橋を渡る。棟門の潜戸を抜けると和風の前栽が広がる。
棟門、鉄骨の倉庫、駐車場、土蔵造りの蔵、木造の平屋の母屋それに続く離れなど、基本的には2世帯が暮らせる構成で長い年月の中 増改築を繰り返した一続きの建物群が前栽を囲むように配置されていた。
依頼
老朽化した部分の改修、必要なヴォリューム確保などの問題を解決する為建物郡のあり方を検討する事から計画をスタートさせた。
世代の緩やかな時間の流れ
残す部分、改修する部分、解体する部分、植物なども含め、施主とご両親と共に検討を進めていった。
施主にとって全ての建物や植物は(生まれ育った場所で)愛着がある風景ではあるが流れる時間の中、現時点で立ち止まりそれらを俯瞰すると、ぼんやりと時代とともに変わるもの、変わらないものが浮かび上がってくる。
インパクトを与えるダイナミックな構成によって新しさを追求する事なく静かで小さな変化によって時間の流れの中に組み込まれ、無限に広がる表現を目指し計画を進めていった。
計画について 相互作用 関係性 構成
比較的新しい時期に増築された子世帯用の木造平家部分を母屋から切り離す。老朽化した鉄骨の倉庫と共に解体を行いその空いたスペースに木造2階建の新しい建物を建築する計画で進める事で決定した。
生活に必要なヴォリュームを確保しながら母屋、前栽との関係を構築、成立させるか検討を重ねた。
建物は母屋と直行方向に配置し2方向から庭を囲む形としている。
L型に対話を行うように母屋との生活の気配を感じる心地よい距離感を目指している
土間、縁側などの構成を利用しながら外部からシンプルな内部空間への自然なデザイン変化で関係性を途切れさせないグラデーションを作り出すことを意図している。
エントランス 吹き抜け空間を構成するする壁の軸を1面のみ傾斜させることで歪みをつくり空間を特徴づけることを試みている。
工事について 循環するということ
この建物郡の増改築など長年にわたり地元の工務店が建築に携わっており、プロジェクト依頼時もメンテナンスなどで50年を超える施主家族との付き合いとなっていた。近年、後継者問題に直面している施工業者が多い中、幸いにも大工である父親から息子が後継者として工務店が受け継がれている状況があった。
今回の工事業者の選定において大工が主体の工務店が設計者が計画した建築物の工事を行うという懸念事項もあったが、継承するということを前提にこの工務店へ工事を依頼する事で進めるた。考え方の違いなどから多くの困難に直面する事になったが一つづつ時間をかけて解決し進め行く事で最終的には良い結果が得られたと思っている。
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